信仰の活力を生み出す神社

 市比賣神社は、平安遷都の翌年(795年)に造営された由緒ある神社。その歴史と伝統、宗教上のシンボル性を強くアピールしながら、宗教活動の基盤としての役割を果たす建築物を、というのがここの狙いです。
 狭い敷地面積や資金づくりという課題を、10年にわたる試行錯誤の結果、克服した建築事例の一つでもありです。
 ここの特徴は一目瞭然。神社社務所と宿舎を一体化させ敷地面積の問題を解決したこと。1,2階の神社社務所は、朱塗りの円柱と格天井、また、可能な限り階高を高くし、古来の神社の風格を演出しました。同時に、積極的な宗教活動が行えるよう、多目的に使用できる空間を確保。多彩な宗教行事に、有効に活用されています。
 社務所の上、3階から5階までは、神縁の女子学生の宿舎に。もちろん、神社の風格をそこなわないよう、見上げないとその存在が確認できない工夫もなされています。この神社は第一期工事として建築したもの。当初の狙いとおり、築後は活動の分野が拡がり、アピール力も増大したとのことです。
 人間が成長するように、建築物もまた成長します。今後は、鎮座千二百年祭に向けて第二期工事に入る予定。
 地域の人々に愛され、そして活力に溢れる信仰の拠点として、建築という側面からお手伝いをしたいと思います。
市比賣神社
京都市
1986年完成
RC造