時代に活きる

若城 光柾 H11.10 

 承知のとおり、日本の社会情勢は、経済的にバブル崩壊以前の二三十年間とは大きく様変りしています。企業活動や生活の処し方は、模索しながら変化して行くでしょう。しかしその事は本当に善い方向に向かっての変化かどうかも解りません。

  政治、経済、国際情勢等取り巻く環境を冷静に分析し、微妙な変化に何かを感じ、心配し、変化に即応できる柔軟な姿勢でいながら、悠久不変の信念目標を自分なりに持ち、ビジョンを見失うことなく臨機応変に対処しなければなりません。むつかしいようですが、一般成人は普通にそうしています。

  ところが、企業のエリートが人生の破綻をきたしたり、世間ではとんでもない事件が多発しています。報道によると、当人は恵まれた環境の基、すこぶる穏便に成長されている様です。何も事が無ければよいのですが、就職に失敗したり、誘惑に乗ったり、お金が無くなったり、失恋したり、様々な世間の困難に処し方を見出す事が出来ずに自己崩壊しているのではないかと思います。

 日本は、四十年以上さして困る事無く、平和に今日を迎え大変結構な事です。しかし、多くの他国に見られるように、切実な生活、命がけの生活をたくましく処している個人がたくさんおられるのも現実です。栄枯盛衰は歴史に十分学べます。何時どう変化するか計り知れません。

 千差万別な世間での困難の処しかたの訓練が、テレビが普及する迄は、家族や親戚、子供社会や地域社会に深く関係し成人になるまでに生活の中で成されていたように思います。

 ところが、平和=安楽の錯覚からか、お金の為の政策か、電化製品で家事を開放して、お金の為に共稼ぎを余儀なくし、核家族で大量消費を拡大してきました。

 結果、子育ては、テレビやテレビゲーム、宣伝にあおられた子供の欲求を満たすのみの高価な玩具をあたえて、つめ込み教育の他人まかせになっていないでしょうか。特色のある情緒や処世術が断絶していないでしょうか。

 「可愛い子には旅をさせろ」と言います。その時々の予期せぬ困難に処する方策を、自ら考え出す力を長い成長の過程で訓練し続ける。すなわち、見知らぬ土地に旅して不自由以上に新しい発見に感激し、困難辛苦どころか、愉しみに満ち溢れる自分自身を見出さなければ、成人になれないのではないでしょうか。

頭は良く、プライドは高いが、対応がうまくいかなく困る人がいますが、大人になってからは、自ら気付き努力しない限り如何ともしがたく思います。辛い事、嫌な事がそのままでは負担は増すばかりで爆発します。自己に目覚めた時から処し方を学習して問題を昇華し、貴重な体験にして愉しい人生の一コマにすべきです。そして、成人した時には他人の困難をも処理でき、共に社会人の一員として困らぬ様にならねばなりません。

  お金で世界の資源を集めてくる国でなく、たくましい生活力がそなわり、しっかりした社会基盤を作れる成人が、世界に奉仕できる国に変わらねば、地に着いた活躍ができないのでは・・・  そうした平和が、たおやかで質の高い困難辛苦をして、子育て教育の基盤となり、良い循環が計れるように思います。

戻る   現代の課題